乳がんは日本人女性に最も多いがんですが、早期発見のためにはどのような行動を取ればよいのでしょうか。
乳がん検診を適切なタイミングで受けなければ、乳がんの発見が遅れる可能性があります。
乳がんの早期発見のためには、30代のうちから検診について知ることが大切です。
本記事では、乳がん検診を30代でも受けるべきなのか、検診の基礎知識や流れ、セルフチェックについて解説します。
30代で乳がん検診について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
30代は乳がん検診を受けるべき?
30代は乳がん検診を受けるべきなのか、次の3つの点から解説します。
- 30代は検診による死亡率減少効果が確認されていない
- 自治体によっては30代にも検査を実施している
- 厚労省は40歳以上に検査を推奨
30代は検診による死亡率減少効果が確認されていない
検診は乳がんの早期発見につながるため、年齢を重ねるにつれて受けることが推奨されています。
がん検診に関する検討会の調査によると、30代は検診による死亡率減少効果が確認されていません。
30代で受ける検診は死亡率減少に役立つとは言えないため、検診が積極的に推奨されていないことを知っておきましょう。
また、30代の検診が積極的に推奨されていない理由は、検診によるデメリットがあるからです。
具体的なデメリットとして、乳がんでなくても陽性と判定される偽陽性や、反対に乳がんであるが陰性と判定される偽陰性が挙げられます。
ほかにも、検診方法によっては放射線被曝のデメリットもあるため、検診を受けるかどうかは総合的な判断が必要です。
自治体によっては30代にも検査を実施している
国は30代の検診を積極的に推奨していませんが、自治体によっては30代にも検査を実施しています。
30代にも検査を実施している自治体の例として、千葉県浦安市が挙げられます。
自治体ごとに乳がん検診の対象年齢や検診間隔が異なるため、お住まいの自治体の検査実施状況を知りたい方はぜひ調べてみてください。
厚労省は40歳以上に検査を推奨
厚生労働省は40歳以上に検査を推奨しています。
なぜなら、40歳代が乳がんの好発年齢であるからです。
30代では乳がんの罹患可能性が低くても、40歳以上は罹患の可能性が高まります。
また、検診の間隔は2年に1回が推奨されているため、計画的に検診を受けることが大切です。
検診の間隔が2年に1回だと、検診と検診の間に乳がんが発症し進行する不安を抱える方もいるでしょう。
乳がんの細胞は、生じてから1cmのしこりになるまで何年間もかかると考えられています。
よって、2年に1回でも乳がんの早期発見には効果的なため問題ありません。
しかし、乳がんの中には細胞が大きくなるスピードが速い種類もあるため、気になる方や異変を感じたりした方は医師に相談しましょう。
30代の乳がん検診について理解しておきたい4つのポイント
30代の乳がん検診について理解しておきたいポイントは、次の4つです。
- 近い血縁に乳がんの方がいる場合は検査をおすすめ
- 検査方法は乳腺エコーがおすすめ
- 費用は原則として自己負担
- 症状がある場合は保険が利用できる
それぞれについて解説します。
近い血縁に乳がんの方がいる場合は検査をおすすめ
近い血縁に乳がんの方がいる場合は、30代から検査をおすすめします。
なぜなら、乳がんに罹患した方の10〜15%に家族歴があると言われているからです。
遺伝性乳がんの場合は、若くても乳がんを発症するリスクがあるため検査を検討しましょう。
血縁内に乳がんの方がいて、遺伝性乳がんのリスクがある場合は遺伝子検査を受けることも検討してみてください。
乳がんの早期発見のために適切な方法は、医師への相談をおすすめします。
検査方法は乳腺エコーがおすすめ
乳がんの検査方法は主に乳腺エコーとマンモグラフィーがありますが、30代の検査方法は乳腺エコーがおすすめです。
乳腺エコーは、胸にゼリーを塗って超音波を当てておこないます。
胸を触るのみでは気づかないしこりを見つけたり、しこりが良性か悪性かの判断だったりが可能です。
乳腺エコーのメリットは、放射線を利用しないため被曝しないことです。
30代の女性はもちろん、妊婦や豊胸手術を受けた方、ペースメーカーをつけている方も受けられます。
また、胸にゼリーを塗って超音波を当てるのみで完了するため、マンモグラフィーのように胸を圧迫する痛みもありません。
身体への負担が少なく、検査も短時間で終えられるため気軽に検査を受けられます。
費用は原則として自己負担
乳がんの検査にかかる費用は、原則として自己負担です。
原則保険適用外のため、検査にかかる費用を把握しておきましょう。
経費の内訳は初診料と診察料に分かれていることが多いですが、予め受診する医療機関に確認してみてください。
自身で検診の予約を取るほかに、人間ドックのオプションで検査を受けることもできます。
また、乳がん検査を無料でおこなっている自治体や、健康保険組合の制度で乳がん検査をおこなっている企業や団体もあります。
検査を受ける機関によって費用が異なるため、ぜひ比較検討してみてください。
症状がある場合は保険が利用できる
乳がんの検査にかかる費用は原則自己負担ですが、症状がある場合は保険が利用できます。
たとえば、セルフチェックをして胸にしこりを見つけた状態で診察を受ける場合です。
しこりを見つけたり、乳頭から出血があったりする場合は、保険適用で検査が受けられます。
保険適用に関する最終的な判断は医療機関によって異なりますが、症状がある場合は診察時に医師や看護師に伝えましょう。
乳がん検診を医療機関で受けるときの流れ
初めての乳がん検診は誰しも緊張しますが、予め検診の流れを知っておくと安心して当日を迎えられます。
乳がん検診を医療機関で受けるときの流れは次のとおりです。
- 予約
- 問診
- 視触診検査
- 画像検査
- 診断結果の確認
流れは医療機関によって異なりますが、一般的な流れを解説するためぜひ参考にしてみてください。
予約
乳がん検診を受けるためには、検査機関への予約が必要です。
お近くの医療機関や自治体の検診窓口に問い合わせてみてください。
医療機関での検診を希望する場合は、乳腺科、乳腺外科、乳腺外来であれば検診に応じてもらえます。
また、産婦人科やレディースクリニックでも検診を受け付けている場合があるため、希望する機関の検診状況を確認しましょう。
検診の予約は、生理後に検査をおこなえるような日時指定がおすすめです。
なぜなら、生理前は女性ホルモンの影響を乳腺が受けるため、検査結果がわかりにくくなる可能性があるからです。
より正確な検査結果を得たい方は、生理後に検査がおこなえるよう調整してみてください。
問診
予約日時に検診機関へ行き、医師による問診を受けます。
問診では、主に次のような内容を聞かれます。
- 月経周期
- 初潮と閉経の時期
- 妊娠や出産歴
- 病歴や家族歴
- 気になる症状の有無 など
いずれも乳がん検診をおこなうにあたって必要な情報になるため、リラックスして回答しましょう。
セルフチェックで気になる症状や検診方法についても、疑問や不安があれば気軽に医師に相談してみてください
視触診検査
視触診検査は、医師が乳房を見たり触ったりして異変がないのかを確認する検査です。
乳房の変形や陥没、乳頭からの分泌物について確認します。
しこりが見つかれば乳がんの早期発見につながる可能性が高まりますが、しこりがない場合や、しこりが良性か悪性なのかまでは判断が難しいです。
そのため、エコー検査やマンモグラフィーと併用で視触診検査がおこなわれます。
また、視触診検査や次におこなう画像検査のために、上半身が脱ぎやすい服装で行くことをおすすめします。
画像検査
画像検査の主な方法は、エコー検査とマンモグラフィーの2種類です。
受診者の年齢や状態によって、最適な検査方法が選ばれます。
30代の検査ではエコー検査がおすすめであるため、ここではエコー検査の流れを解説します。
- 検査室に入室する
- 上半身の衣服を脱ぐ
- ベッドに仰向けになり、胸にタオルをかける
- 乳房に検査用ゼリーを塗る
- 乳房に超音波を当てて画像を撮る
- 検査を終えたら検査用ゼリーを拭き取る
- 検査室から退室する
検査の流れは非常にシンプルなため、安心して医師や看護師の指示に従いましょ
診断結果の確認
問診から画像検査までを踏まえて診断結果を確認します。
何らかの異常があり精密検査に進む場合は、医師からの説明を受けて精密検査の方針を決めましょう。
精密検査は次のような種類が挙げられます。
乳腺MRI
乳房に電磁波を当てて、乳房内の様子を画像化する方法です。
被曝や痛みの心配なしに精度の高い検査結果が期待できます。
CT
X線を利用して全身の状態を調べる方法です。
乳房以外にがん細胞が転移しているのかを調べられます。
細胞診(穿刺吸引細胞診)
乳房のしこりに細い針を指し、細胞を取得する方法です。
細胞を顕微鏡で観察し、良性か悪性なのかを見極めます。
乳がん検診にかかる費用
乳がん検診にかかる費用は、検診方法や医療機関によって異なります。
パターンごとに検診にかかる費用をまとめると次のとおりです。
- 医療機関での受診(全額自己負担):2〜3万円程度
- 人間ドックのオプション :4,000〜5,000円程度
- 自治体の検診制度 :無料〜3,000円程度
- 健康保険組合の制度 :無料〜1,000円程度
- 保険適用(3割自己負担) :6,000〜9,000円程度
検診を希望する機関が決まったら、費用を確認しておくと安心です。
乳がんの早期発見のためにセルフチェックも大切
乳がんの早期発見のためには、セルフチェックをおこないましょう。
検診を受けることに加えて、自身でも胸の状態を観察したり触ったりすれば異変を見つけられます。
厚労省では、乳房を意識した生活習慣として「ブレスト・アウェアネス」の実施を推奨しています。
ブレスト・アウェアネスの4つのポイントは次のとおりです。
- 自分の乳房の状態を知る
- 乳房の変化に気を付ける
- 変化に気づいたらすぐ医師に相談する
- 40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける
いずれも特別な知識や準備を必要とせず心がけることから始められるため、4つのポイントを意識しながら過ごしてみてください。
セルフチェックのやり方
乳がんのセルフチェックは、誰でもおこないやすい簡単なものです。
月に1回、生理が終わって4〜7日経過後におこなう習慣をつけましょう。
毎月継続して実施すれば、乳房の異変に気づきやすくなります。
異変に気づいたら迷わず医師に相談してみてください。
具体的なセルフチェックの方法は次のとおりです。
- 鏡の前に立つ
- 仰向けに寝る
- 乳首をつまむ
それぞれについて解説します。
1:鏡の前に立つ
お風呂上がりや着替えなど、服を脱いだタイミングがおすすめです。
鏡の前に立ち、腕を上げたり下げたりしてみましょう。
乳房や胸から脇にかけて引きつったり、違和感を感じたりしないのか確認します。
2:仰向けに寝る
仰向けに寝て、人差し指から小指までの4本の指を揃えます。
指の腹で乳房をまんべんなく押し、しこりがないのかを確認してみてください。
3:乳首をつまむ
最後に乳首をつまみ、分泌物の有無を確認します。
以上でセルフチェックは完了です。
5分程度でできる簡単な方法のため、ぜひ取り入れてみてください。
まとめ
本記事では、乳がん検診を30代でも受けるべきなのか、検診の基礎知識や流れ、セルフチェックについて解説しました。
乳がんの早期発見のためには、30代のうちから検診について知り、総合的に判断して検診を受けるかどうなのかを決めることが大切です。
まずは月1回のセルフチェックから、乳がんの早期発見に向けた取り組みを始めてみてください。
<参考>
がん検診に関する検討会中間報告|厚生労働省
乳がん(超音波)検診 30歳代・40歳代奇数年齢|浦安市公式サイト
年代別に知るべきこと<20代・30代> | ピンクリボンフェスティバル公式サイト
乳がん検診ってどんな内容?流れや費用は? | ワコールピンクリボン活動
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