がんになったらどうしよう、がんにならないためにはどうしたらよいのか、誰でも一度は不安になるでしょう。
家族や友人ががんになった、インターネットやSNSでがんに関するニュースを見たなどがきっかけで、がんを身近に感じるのかもしれません。
本記事では、がん検診の必要性、検診の種類や費用について詳しく解説します。
がんは、早期に発見すれば命を脅かす危険はなく、治療の負担も軽減できます。20代・30代の若い方もがん検診に対する知識を高めて、がんの早期発見、予防を目指しましょう。
がん検診は20代でも受診すべき?理由を解説
若い頃はがんにならない、健康の問題はないからとがん検診にあまり関心がない方もいるでしょう。
しかし、20代から徐々に罹患リスクが上昇するがんがあるのも事実です。
また、がんの発症には、遺伝要因と環境要因が深く関わりがあるといわれており、家族や血縁者にがんになった方がいる場合、がんの発症リスクは高くなります。
ここからは、20代でもがん検診を受診する重要性を解説します。自身の年齢が対象となっているがん検診や、家族の罹患暦が心配な方はぜひ参考にしてください。
対象年齢を満たした検診は受診すべき
がん検診の対象年齢は、がんの種類で異なり、がんに罹患するリスクがある年齢の方が対象者です。
子宮頸がんにおいては、近年20~40歳代の女性で罹患率が増加傾向にあることから、20歳以上の女性を対象としています。
また、受診間隔も定められており、子宮頸がんの受診間隔は2年に1回です。
受診間隔は、がんの早期発見・早期治療、がん死亡率の減少を目指し、医学的根拠に基づいたがんの進行スピードに応じて設定されています。
小さすぎるがんは発見が難しい一方、大きくなったがんは治療が難しく、命に関わるケースも少なくありません。
そのほか、40歳以上を対象とした乳がん検診は2年に1回、大腸がん、肺がんは1年に1回を推奨しています。胃がん検診においては、50歳以上でなければ対象となりません。
対象年齢を満たしたら、定められた受診間隔で受診しましょう。
家族でがんを患った方がいれば検診を受診すべき
がんの発症要因の一つは、遺伝です。
20代・30代の比較的がんに罹患する確立が低い年齢層も、家族や血縁関係の近い親族にがんになった方がいる場合は、罹患リスクが高くなるといえるでしょう。
とくに、第一親等(親、兄弟姉妹)が何らかのがんになったことがある方は注意が必要です。
遺伝子的側面のほか、同じ生活環境の中で過ごしている環境的側面の影響から、がんの発症リスクが上昇します。
助成制度が適用されない年齢の場合、自由診療によるがん検診や、遺伝子型を解析して発症リスクを調べる遺伝子検査などを受けることが可能です。
家族の罹患歴が気になる方は、検診を受診しましょう。
がん検診にかかる費用
検診費用は、自治体によるがん検診と医療機関が任意で提供しているがん検診で大きく異なります。
助成制度を利用してお住まいの市区町村が委託している医療機関を受診した場合、自己負担額の軽減が可能です。
以下で、国が推奨する5種類のがん検診の相場料金を順に解説していきます。
自治体のがん検診費用
市区町村が実施しているがん検診には、助成制度を利用できます。少ない自己負担額でがん検診の受診が可能です。
下記は、市区町村におけるがん検診の平均単価です。
検診内容 | 自己負担単価 |
---|---|
胃がん検診(胃部エックス線検査) | 1,505円 |
胃がん検診(胃内視鏡検査) | 3,116円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査) | 527円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査+喀痰細胞診) | 975円 |
大腸がん検診 | 584円 |
乳がん検診(乳房エックス線検査のみ) | 1,291円 |
乳がん検診(視触診+乳房エックス線検査) | 1,619円 |
子宮頸がん検診 | 1396円 |
※料金はすべて税込表示です。
お住まいの地域や医療機関により検査内容と自己負担額が異なるので、広報誌や公式サイトを確認ください。
また、乳がん検診の超音波(エコー)検査や、子宮頸がん検診のHPV検査が実施される場合など、検査の種類で費用が異なります。
病院での検査費用
医療機関や検診機関が任意で提供しているがん検診を受診する場合、助成制度や保険は適用されません。自由診療のため全額自己負担です。
受診する機関や検査内容で金額は異なりますが、自由診療におけるがん検診の平均は下記のとおりです。
検診内容 | 検診単価 |
---|---|
胃がん検診(胃部エックス線検査) | 7,103円 |
胃がん検診(胃内視鏡検査) | 14,005円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査) | 2,483円 |
肺がん検診(胸部エックス線検査+喀痰細胞診) | 5,129円 |
大腸がん検診 | 2,366円 |
乳がん検診(乳房エックス線検査のみ) | 5,111円 |
乳がん検診(視触診+乳房エックス線検査) | 7,471円 |
子宮頸がん検診 | 6,752円 |
※料金はすべて税込表示です。
何らかの症状があり医療機関を受診し、医師が必要と判断した場合は保険診療が適用されるケースもあります。
がん検診を受診する流れ
がん検診は、お勤め先の職場、お住まいの市区町村、医療機関の3つで受診が可能です。
ここからは、それぞれのがん検診の特徴と受診方法について解説します。
自身に合ったがん検診を受けるために、ぜひ参考にしてください。
職場で受診する場合
会社は従業員に対して、1年に1回の定期健康診断の実施義務があります。
労働安全衛生法で定められている健康診断の項目のほか、がん検診を実施している場合もありますが、すべての企業に義務づけられているわけではありません。
企業や業種により、検査項目や対象となる条件が異なるので、お勤め先の人事・労務担当者に確認しましょう。
派遣社員の場合、直接労働契約を結んでいる派遣元に実施義務があります。
健康診断の費用は会社が全額負担しますが、再検査が必要となった場合は自己負担になるケースが多いでしょう。また、健康診断にオプション検査を追加する際は、基本的に自己負担です。
自治体で受診する場合
市区町村では健康増進法に基づき、がん検診を実施しています。
住民票のある市区町村と契約している医療機関で受診すれば、少ない自己負担額でがん検診を受けることが可能です。
がん検診の対象となる年齢と間隔に応じて、自治体からご自宅に案内が届きます。中身を確認しましょう。
案内に記載された公式サイトやがん検診窓口、契約医療機関などで検診の予約をします。申し込み後、検診内容に応じて事前に検査キットが郵送される場合もあります。
がん検診無料クーポンが同封されている場合は、受診の際に忘れずに持参しましょう。
一部の自治体では、個別に案内をしていないケースもあるため、広報誌や公式サイトを確認ください。
検査結果は、受診後10日〜1か月を目安に書面で郵送されるケースが一般的ですが、医療機関に来院し、結果説明を受ける場合もあります。
病院で受診する場合
医療機関が独自にがん検診を実施している場合があります。
とくに自覚症状がなく、医師の判断が伴わない場合は、保険診療が適用されません。自由診療となり、検診費用は全額自己負担です。
自由診療でがん検診を受ける際は、自治体や職場で受けられるものと比べて費用が高くなります。医療機関により、対応している検査項目や費用が異なるため、あらかじめ確認しましょう。
受診を希望する医療機関へ直接電話やメール、予約フォームなどで申し込みください。
がん検診を受診するメリット
がん検診は、がんによる死亡を減らすことを目的としており、がんの早期発見・早期治療、予防が最大のメリットです。
また、がん検診で異常が見つからなかった場合、一定期間は安心して暮らせることもメリットといえるでしょう。
ここで、がん検診を受診する2つのメリットをお伝えします。
早期のがんを見つけられる
多くのがんは、早期であれば治療が可能です。がんの早期治療は、身体的な負担や経済的な負担の軽減にもつながります。
また、がん細胞が増殖し、ほかの場所に移動しやすくなるには時間がかかるため、初期の段階では転移の心配もないといえるでしょう。
自覚症状がないまま病状が進行すると、治療による身体への負担や精神的なストレスなど、さまざまな苦痛が伴う恐れがあります。
がんが進行してしまった場合、長い時間治療に向き合う必要があるため日常生活にも影響を及ぼすでしょう。がんは、早期発見・早期治療が大変重要です。
他の病気を発見できる
がん検診では、がんになる前段階の病変の発見が可能です。
がんは、細胞の遺伝子の変異、ウイルスや細菌への感染が関係しています。何らかの原因で正常と異なる細胞が蓄積・増殖し、ポリープや腫瘍、異型上皮などが生じます。
このような病変には、自覚症状がありません。しかし、将来的にがんになるリスクが高いため、必要に応じて治療や経過観察をおこなう必要があります。
がん検診は、がんになる前段階の病変を見つける役割を担っており、がんの予防にもつながります。
がん検診を受診するデメリット
がん検診には、「偽陰性」「偽陽性」「過剰診断」などのデメリットがあります。
すべての受診者に起こるわけではありませんが、デメリットの存在を意識したうえで受診しましょう。
また、一部の検査内容により身体的な負担が伴う可能性もあります。
たとえば、内視鏡検査による出血や穿孔のほか、バリウム検査では下剤を服用する必要があり、腸内でバリウムが貯留してしまった場合、腸閉塞のリスクがあります。
次に、がん検診を受診するデメリットについて詳しく説明します。
100%がんが見つかるわけではない
どのような優れた検査でも、がんが100%発見されるわけではありません。
がんの種類や形状のほか、がんが小さすぎる・見つけにくい場所にあるなど、診断が難しいケースにより見落としてしまう「偽陰性」が起こる可能性があります。
健康な方に対して不必要な検査する可能性がある
がんの中には、進行せず消失したり、そのままの状態で留まったりするタイプがあります。
これらの命を脅かす危険がないがんと進行性のがんは、区別できません。
速やかに精密検査や手術を受けたとしても本来不必要な検査・治療だった「過剰診断」の可能性もあります。
また、誤ってがんの疑いがあると診断されてしまう「偽陽性」により、身体的・精神的な負担が生じるでしょう。
検診や精密検査を受けて初めて判明するため、完全に避けることはできません。
マイクロCTC検査でがんリスクに備える
がんには20代から罹患率が高くなるものもあるため、20代でもがん検診は重要であると説明しました。
しかし、がん検査を受けようと思っていても仕事や育児などに追われ、受診する時間をなかなか取れない方もいるでしょう。
また、子宮頸がんや乳がんなどの検査は不快感や痛みを伴うという声もあるために受診をためらってしまう方もいるのかもしれません。
がんの検査方法には、そのような方でも負担なく受けられる「マイクロCTC検査」と呼ばれるものもあります。
ここでは、マイクロCTC検査について詳しく解説します。
1回5分の採血でがんリスクがわかる
マイクロCTC検査は、1回5分の採血で血液がんを除く全身のがんリスクがわかる検査です。
従来のがん検査の主な手法であるPET-CTとMRIには、発見しづらいがんがあります。そのうえ、検査の所要時間はPET-CTで6時間、MRIでは30分~1時間程度です。
本当の意味で全身のがんリスクをチェックするにはさらなる検査が必要になるため、所要時間が10時間を超えてしまうケースもあります。
しかし、マイクロCTC検査であれば1回5分で全身のがんリスクを調べることが可能です。
悪性度の高いがん細胞だけを捕捉
従来のがんの早期スクリーニング検査は、尿検査・遺伝子検査・腫瘍マーカーなどからがんのリスクをおおまかに示すものでした。
そのため、正確性を疑問視する声も挙がっています。
一方で、マイクロCTC検査は血中に流れている他臓器への浸潤・転移能力の高いがん細胞を特定して捕捉し個数を明確に提示します。
そのため、高精度でがんのリスクがわかるといわれており、がんではない方が陰性になる正確性を表す特異度は94.45%とされています。※1
がんの早期発見につながる
がん細胞は、1mm程度から何度も分裂を繰り返して増殖します。
発見できるがんの大きさは約1cmからですが、この頃にはすでに約10億個以上のがん細胞が身体の中に存在しているといわれています。※1
1cmを超える頃から成長が加速し、半年~1年程度でステージ1からステージ2、3まで一気に進行するケースも少なくありません。
そのため、がんの検査をなかなか受診できずにいると手遅れになってしまうこともあります。
マイクロCTC検査は、1回5分で全身のがんリスクがわかる検査です。多忙を極める方でも受けやすいうえ、1回の検査でがんの早期発見も期待できます。
通常のがん検診を受ける時間を取れない方、短時間で全身のがんリスクチェックをおこないたい方はマイクロCTC検査の受診を検討してみてください。
20代のがん検診に関するよくある質問
がん検診に興味はあるが、検査や検査結果に対する不安な気持ちから受診をためらう方もいるでしょう。
また、健康上の不安を抱えていない20代の方は、がん検診の受診経験がなく、必要性を感じていないのかもしれません。
ここからは、がん検診に関するよくある3つの質問について回答します。
ぜひ参考にしてみてください。
20代のがん検診受診率は?
生労働省は「がん検診推進事業」として、20歳以上の女性に対し、子宮頸がん検診を推奨しています。しかし、20代の検診受診率はわずか26.5%にとどまっています。
がん検診を受けない理由として下記があげられます。
- 受ける時間がない
- 健康に自信があり必要性を感じない
- 検査に伴う苦痛に不安がある
就学や就職、プライベートなどに忙しい20代は、がん検診への関心が低く、受診率の低さにつながっています。
がんの疑いがある確率は?
がん検診を受診後、がんの疑いがあると診断された場合「要精密検査」となります。
各検診受診者10,000人のうち、要精密検査者の割合は下記のとおりです。
要精密検査者 | がんの疑いがある確立 | |
---|---|---|
子宮頸がん | 240人 | 2.13% |
乳がん | 630人 | 6.84% |
大腸がん | 592人 | 6.19% |
胃がん | 652人 | 6.78% |
肺がん | 160人 | 1.53% |
(検診受診者:10,000人)
精密検査を受けた場合でも、必ずしもがんと診断されるわけではありません。
精密検査の受診者に
がん検診と人間ドッグの違いは?
がん検診は、がんによる死亡率の減少を目的として市区町村が健康増進法に基づき実施している対策型検診です。
公的な助成金が出るため自己負担額は少額です。自治体により自己負担額は異なりますが、無料~数千円ほどでしょう。
助成制度を利用するためには、定められた受診対象年齢や受診間隔、検査項目に従い、自治体の契約医療機関を受診する必要があります。
一方、任意型検診の人間ドックは、がんの早期発見はもちろん、生活習慣の予防・改善に力を入れています。また、腹部の超音波(エコー)検査で国が推奨する特定のがん検診以外のがんの発見にもつながることが特徴です。
そのほか、脳ドックや心臓ドックなど、自身のリスクにあわせてオプション検査を追加できるのも強みでしょう。
費用は原則全額自己負担です。一部、加入している健康保険組合から補助金が出る場合もあります。
まとめ
20代から就学、就職、結婚、出産、子育てなど、さまざまなライフイベントに直面するため、がん検診を受診する時間やお金が惜しいと考えてしまうのかもしれません。
しかし、がんは進行すると身体的・経済的の負担が大きい治療を受けざる得なくなります。
最悪の場合、治療が難しく、命を落とす危険もあるでしょう。
がん検診は、早期治療・早期治療のほか、がんの予防にも有効です。
大切な将来のために自身の身体と向き合う時間を作り、自治体の制度やマイクロCTC検査を上手に利用しながらがん検診を受診ください。
<参考>
知っておきたいがん検診
厚生労働省