乳がんは、がんのなかでも日本人女性のかかる頻度が最も高く、近年、乳がんをはじめ女性特有がんの若年化が話題になりました。
乳がんは40代後半から50代にかけてピークを迎えますが、20代から増え始め、30代では急激に増加します。
乳がんのリスクが増える20代~40代には授乳中の方もおり、授乳中は乳がん検診を受けられるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、授乳中でも乳がん検診を受けられることを紹介します。
授乳中に乳がんの症状と勘違いしやすい乳房の症状から、授乳中の乳がん検診の方法まで解説します。
ぜひ乳がん検診を受けるか迷う授乳中の方は参考ください。
授乳中にがん検診を受けても問題はない
結論からお伝えすると、授乳中に乳がん検診を受けても問題ありません。
ただし授乳中に乳がん検診を受けると、正しい診断ができない場合があるため、自治体により授乳中、乳がん検診を受けられないと定めている場合もあります。
授乳中に乳がん検診を受けても正しい診断ができない理由として、授乳中は乳腺が発達して厚くなり、乳房が張るためです。
とくに乳がん検診で行われるマンモグラフィは、授乳中に撮影すると、全体が白く映り、検査の精度が落ち、適切な診断ができません。
診断精度が気になる方は、卒乳後6ヶ月を目安にマンモグラフィを受けましょう。
乳がん検診はマンモグラフィが国際基準ですが、追加で超音波(エコー)検査をおこなう場合があります。
超音波検査では、超音波を身体の一部に当てて反射させ、体内の映像化が可能です。
授乳中、マンモグラフィでは適切な診断ができないため、超音波検査を勧められる場合があります。
授乳中の超音波検診は可能ですが、普段と乳房の状態が異なるため、検査の精度は低下します。
授乳中に乳がん検診を受けたいときは、医療機関に相談するか、受診する医療機関の公式サイトで確認しましょう。
また授乳中には乳がん検査の精度が低下するため、自宅でできるセルフチェックも重要です。
近年、セルフチェックで乳がんが見つかるケースも増えつつあります。
次項より、授乳中に気をつけたい乳房症状とセルフチェックについて紹介します。
授乳中に乳がんの症状と勘違いしやすい乳房の症状
授乳中に、乳がんの症状と勘違いしやすい乳房症状は次の2点です。
しこり
乳がんの自覚症状のひとつにしこりがありますが、しこりは授乳中にもよくみられます。
授乳中にみられるしこりの原因は、乳瘤(にゅうりゅう)です。
乳瘤とは母乳が乳管に詰まった状態を示し、そのままにしておくと乳腺炎を引き起こします。
乳がん、乳瘤によるしこりの特徴は次のとおりです。
乳がんによるしこり | 乳瘤によるしこり |
---|---|
石のように硬い しこりが動かない 乳房の外側上部、内側上部にしこりができやすい | 授乳やマッサージをおこなうとしこりがなくなる 痛みや発熱を伴う場合がある しこりを押すと動く しこりに弾力性がある |
乳がん、乳瘤によるしこりには特徴がありますが、検査なしには良性か悪性か判断できません。
授乳中にしこりができた場合、授乳やマッサージ、搾乳をしてもしこりが治らないときは乳腺外来を受診しましょう。
血乳
授乳中には、母乳に血が混ざり乳頭から血乳が出る血性乳頭分泌がみられます。
母乳に血が混ざる原因は次のとおりです。
- 授乳中は、乳腺が著しく発達するため血管がもろくなり出血しやすい
- 不適切なマッサージや搾乳により、乳管内の毛細血管が破綻
- 乳房にある血管が急激に拡張
とくに初産婦に血乳が多く、産後1週間以内にみられます。
授乳中にみられる血乳は徐々に色が薄くなり、産後約1週間前後で消失します。
赤ちゃんが血乳を飲んだ場合、吐いたときに血液が混ざったり、うんちが黒くなったり、一時的に影響が出る場合があります。
しかし母乳は血液からできているため、赤ちゃんが血乳を飲んでも問題ありません。
同じく乳がんの症状にも乳頭分泌があり、なかには出血性の分泌物がみられます。
血乳は乳がんの発見の手がかりとして非常に重要で、とくにしこりを伴わない場合、血乳の症状があれば早期発見に役立ちます。
授乳中以外に血乳が出た場合、大半が乳腺症や乳管内乳頭腫など良性です。
しかし乳管内乳頭種と乳がんの血乳は、どちらも次のように症状が似ており、分泌物のみで良性か悪性か判断が難しいため、医療機関へ受診しましょう。
【乳管内乳頭腫と乳がんによる血乳の特徴】
- 乳頭からの分泌:多孔性より単行性の割合が高い
- 分泌物:透明より出血性の分泌物の割合が高い
授乳中の乳がんセルフチェック方法
ここでは授乳中の乳がんセルフチェック方法として、次の内容を紹介します。
チェックポイント
乳がんかどうかセルフチェックをするときは、まず乳がんによく見られる自覚症状を確認しましょう。
乳がんの自覚症状は次を参考ください。
【チェックポイント】
- 乳房の形が左右非対称ではないか
- 乳房にしこりがないか
- 乳頭や乳輪がただれていないか
- 乳房にくぼみがないか
- 乳頭から分泌物がでていないか
- 乳房にひきつれがないか
チェックポイントの確認方法は次のとおりです。
チェックポイント | 確認方法 |
---|---|
乳房の形が左右非対称ではないか | 両手をあげて頭の後ろで手を組み、乳房の形を確認 |
乳房にしこりがないか | 4本指で「の」の字を書くように、乳房を指先で軽くなでながら確認 仰向けに寝て背中にタオルを敷いた状態でしこりがないか確認 |
乳頭や乳輪がただれていないか | 乳房にかゆみや変色がないか確認 |
乳房にくぼみがないか | 両手をあげて頭の後ろで手を組み、乳房の形を確認 |
乳頭から分泌物がでていないか | 指で乳頭の根元を軽くつまんで分泌物がないか確認 |
乳房にひきつれがないか | 両手をあげて頭の後ろで手を組み、乳房の形を確認 |
入浴前や入浴中に確認
乳がんのセルフチェックは、前項で紹介したチェックポイントをもとにおこないます。
自身の身体が観察できる入浴前や入浴中に、鏡の前で確認しましょう。詳しい確認方法は、次を参考ください。
【入浴前の確認方法】
- 鏡の前で両手を上にあげ、ひきつれやただれがないか乳房や乳頭を観察
- 両手を上にあげたまま、正面・側面・斜めから乳房の形が左右非対称ではないか観察
- 乳頭をつまみ、血のような分泌物がないか観察
【入浴中の確認方法】
※皮膚の凸凹がわかるよう手に石鹸をつけておきます
- 腕を上げた方の乳房の表面に「の」の字を書くように動かし、しこりやこぶがないか観察
- 指先をそろえてわきの下に差し入れ、リンパ節が腫れていないか確認
就寝前に確認
仰向けの姿勢で乳がんのセルフチェックをおこなうと、乳房の内側と外側からしこりがないか確認できるため、就寝前にも確認しましょう。
仰向けの姿勢を取るときは、肩の下に薄いクッションや畳んだタオルなどを敷いてセルフチェックをおこないます。
【就寝前の確認方法】
- 左手を上にあげ、頭の下に置く
- 右手の指をそろえて伸ばして、左乳房の内側に乗せる
- 右手の指の腹を左乳房の内側から中央部へ滑らせ、しこりの有無を確認
- 同じように右手の指をそろえて伸ばし、左乳房の外側に乗せる
- 右手の指の腹を左乳房の外側から中央部へ滑らせ、しこりの有無を確認
※右乳房も同様の手順
毎月一度セルフチェックを習慣化
セルフチェックは毎月一度おこない、習慣化しましょう。その理由として、乳がんは早期発見できれば、その後の生存率が高まるからです。
セルフチェックを習慣化すると、身体の小さな変化にも気づけます。
通常、自身で気づけるしこりの大きさは2cm以上ですが、セルフチェックを定期的におこなうと、1cmのしこりにも気づけるでしょう。
2cmを超えるしこりがある場合、乳がんの病期は2期となり、10年生存率は78.6%です。
しこりが1cmのうちに乳がんを見つけられれば、病期は1期となり10年生存率は89.1%となり、より生存率を高められます。
乳がんの病期 | 病期の詳細 | 10年生存率 |
---|---|---|
Tis | 乳管内にとどまるがん。 非浸潤がん(超早期) | 94.72% |
0期 | しこりや画像診断での異常な影を認めないもの | 95.45% |
1期 | 2cm以下のしこりで、リンパ節への転移がないと思われるもの | 89.10% |
2期 | 2cmを超える5cm以下のしこりがある、もしくはリンパ節への転移が疑われるもの | 78.60% |
3a期 | しこりが5cmを超えるもの | 58.74% |
3b期 | しこりが皮膚に及んでいるもの | 52.04% |
4期 | しこりの大きさを問わず、ほかの臓器に転移がみられるもの | 25.49% |
毎月1回のセルフチェックを忘れないためにも、セルフチェックをいつおこなうか、月初めや給料日など日を決めておきましょう。
乳がんは外側上部に発生しやすい
乳がんは乳房のなかでもとくに外側上部に発生しやすいと報告されています。
乳房は乳首を中心とし4つに分け、部位ごとの乳がん発生率は次のとおりです。
乳房を4つに分けたとき | 乳がん発生率 |
---|---|
外側上部 | 53% |
外側下部 | 14% |
内側上部 | 19% |
内側下部 | 6% |
乳がんは半数以上が外側上部に発生し、次に内側上部、外側下部です。
セルフチェックをおこなうときは、しこりができやすい部位を知っておくと、より効果的でしょう。
授乳中の乳がん検診の方法
最後に、授乳中の乳がん検診の方法を紹介します。検査方法は次の3とおりです。
マンモグラフィ
マンモグラフィは乳がん検診の国際基準であり、授乳中でなければ、乳がん検診を予約すると、まずおこなう検査です。
ただし授乳中は、乳腺が発達して厚く、乳房が張るため、マンモグラフィをしても全体が白く映り、適切な診断ができません。
授乳中にマンモグラフィを検討している方は、メリット、デメリットを事前に理解しておきましょう。
メリット
マンモグラフィは単独、もしくは視触診と組みあわせると、死亡率減少の効果が証明されています。
さらに検査の感度は80%前後であり、マンモグラフィで異常がみられると、病変部分の細胞を採取し生検をおこない、診断が確定します。
マンモグラフィでは視触診のみでは発見できない小さなしこりをみつけられ、カルシウムが沈着する石灰化病変はマンモグラフィでしか見つけられません。
乳房の石灰化は多くが良性ですが、がんに伴い石灰化が生じる場合もあります。
石灰化はしこりとは異なり、自身では気づけないため、マンモグラフィが有用です。
デメリット
授乳中、マンモグラフィのデメリットは2つあり、1つめは前項で紹介したように、授乳中はマンモグラフィの精度が落ち、適正な診断ができない点です。
2つめは、授乳中にマンモグラフィを受けると、とくに痛みを感じやすい点で、理由として、授乳中はいつもより乳房が張るためです。
上記のようなデメリットから、授乳中、自治体や医療機関により、健康診断によるマンモグラフィは受け付けておらず、実施できない場合があるため注意しましょう。
超音波(エコー)
授乳中はマンモグラフィの精度が落ち、適切な診断ができないため、マンモグラフィの代わりに超音波が勧められる場合があります。
超音波では被爆のリスクもなく、機械を乳房に押し当てて、反射してくる超音波の様子を画像にし、乳腺や乳腺周辺にしこりや石灰化がないか確認が可能です。
ただし授乳中は乳房の状態が異なるため、検査の精度が低下します。
授乳中に超音波を検討している方は、メリット、デメリットを事前に理解しておきましょう。
メリット
授乳中、超音波はマンモグラフィのような発達した乳腺による病変の見えにくさに対し、影響を受けにくいとされています。
その理由はマンモグラフィの場合、乳腺と乳がんは共に白く映りますが、超音波の場合、乳腺は白く、乳がんは黒く映るためです。
そのため超音波は、授乳中でもマンモグラフィより比較的乳がんを発見しやすいでしょう。
デメリット
超音波は、必ず医療機関に取り扱いがあるわけではありません。
さらに乳がん検診はマンモグラフィのみが推奨されているため、超音波を受けたい場合、事前に受診を検討している医療機関に相談しましょう。
視診と触診
乳がん検査では、まず目で確認する視診、触れて確認する触診をおこないます。
視診、触診で観察する項目は次のとおりです。
【視診】
- 乳房のくぼみやただれの有無
- 乳房の形の左右の差
- 乳頭からの分泌物の有無
【触診】
- しこりの有無
- しこりがある場合:しこりの状態(大きさ、硬さ、動き)
しこりが認められた場合、触診でしこりの状態を確認します。乳がんのしこりは硬く、動かないものが多いとされています。
そのため視触診は、がんのしこりである疑いをもつためにも大切です。
授乳中もがんリスクを調べられるマイクロCTC検査
授乳中で乳がんの検査を検討している方には、マイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は乳がんを含む全身がんのリスクを短時間で判定できる検査方法で、次のような特徴があります。
それぞれの特徴について詳しく解説するため、授乳中でもがんに備えて早期に検査を受けたい方はぜひチェックしてみてください。
1回5分の採血で検査完了
マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで全身のがんリスクを簡単に調べられます。
従来では、血液検査以外に詳細な検査が追加で必要になる場合もあり、1日以上の時間を要することもあれば、30万円ほどのお金も必要です。
それに比べて、マイクロCTC検査は1回5分の採血で済むうえ、費用を抑えた198,000円で受けられます。
そのため、出産後で育児が忙しく、検査に時間を割けない方や、お金を節約したい方にもおすすめです。
授乳中も安全にがん検査できる
先述したように、マイクロCTC検査は血液を採取するだけで血液がんを除く全身のがんリスクをチェックできる検査です。
そのため、放射線の被爆リスクや造影剤の副作用もなく、授乳中の方も安心して受けられます。
また、有害な物質が母乳に移行することもないため、授乳中の方がこの検査を受けても、赤ちゃんに影響はありません。
忙しい方はもちろん、授乳中の方にもぴったりな検査と言えます。
悪性度の高いがんを的確に捕捉
マイクロCTC検査は、血中に溶け出した悪性度の高いがんのみを、的確に捕捉できる検査方法です。
がんでない方を正しく判定する割合(特異度)は94.45%で、検査結果の信頼性の高さを表しています。
さらに、検出されたがんが何個あるのかまで提示できるため、具体的にがんの状態を知れば、診断に対する納得感も得やすいでしょう。
「乳がん検査を受けたいけど授乳中だから不安」という方は、ぜひ全身のがんリスクもチェックできるマイクロCTC検査を検討してみてください。
まとめ
授乳中は乳がん検診を受けられますが、乳腺が発達しているため、マンモグラフィでは適切な診断ができません。
そのため乳がん検査が必要な場合、マンモグラフィの代わりに超音波を勧められる場合があります。
しかし乳がん検診の場合、授乳中は検査の精度が落ちるため、検査を受けられない自治体もあります。
乳がん患者の半数が、セルフチェックで乳がんを発見していることから、乳がんの早期発見にはセルフチェックは重要であるといえるでしょう。
チェックポイントを参考いただき、定期的なセルフチェックを習慣化ください。