子宮頸がんは、多くの女性が一生に一度は感染する機会のあるヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発症するとされています。
しかし、実はそのほかに精神的なストレスも大きな要因のひとつといわれているのです。
今回は、子宮頸がんとストレスの関係性について詳しく解説します。検査時の痛みや不快感の緩和方法もあわせて紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
子宮頸がんとストレスの関係
さっそく、子宮頸がんとストレスの関係性について解説します。
ストレスが子宮頸がんリスクを高める報告
2019年8月1日、米国がん学会のCencer Research誌にて精神的ストレスは子宮頸がんの死亡リスクを高めるという研究結果が発表されました。
4,000人程度の患者の記録を調査しストレス関連の障がいを持っている、もしくはストレスのかかる生活を経験している患者はストレスをとくに報告しなかった患者と比べ死亡率が高くなったとされています。※1
また、慢性的なストレスは免疫力の低下を招くといわれています。子宮頸がんを発症する主な原因は、ヒトパピローマウイルスへの感染です。
そのため、慢性的なストレスのある方は免疫力の低下から子宮頸がんを発症しやすいともいわれています。
子宮頸がんの原因
ここで、子宮頸がんの原因や発症リスクを高める要因を解説します。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染
子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。
HPVには性行為で感染するケースが多く、女性の多くは一生に一度は感染するといわれています。
海外では、性行為の経験がある女性のHPV感染率は84.6%です。※2
しかし感染しても通常の場合、免疫機能によって自然と体外へ排除されるため子宮頸がんの発症に至ることはありません。
ただしウイルスへの感染が長期にわたり持続する場合もあり、そのなかの一部の方は数年以上かけて子宮頸がんに移行するといわれています。
子宮頸がんの危険因子
子宮頸がんの発症リスクを高める要因には、次のようなものが挙げられます。
- 妊娠・出産経験が多い方
- 多数の男性と性交経験がある方
- 初交年齢が若い方
- 喫煙習慣のある方
- 経口避妊薬を服用中の方
上記に該当する方でも、将来必ずがんになるわけではありません。
しかし危険因子であることはたしかであるため、該当する点がある方は定期的な検診の受診はもちろん医療機関にて医師に相談すると安心です。
子宮頸がんとは
ここまで子宮頸がんとストレスの関係性や原因についてみていきましたが、そもそもどのような病気なのかわからない方もいるでしょう。
そこで、ここからは子宮頸がんの病態について解説します。
子宮頸がんは子宮の入り口部分にあたる細胞ががん化
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部に発生するがんです。大部分の子宮頸がんは、異形成とよばれる前がん病変を経てからがんになります。
前がん病変の段階で発見できれば治療しやすいといわれていますが、子宮頸部でも奥にあたる部分にできた場合には発見が困難なケースもあります。
子宮頸がんの症状
子宮頸がんの初期には多くの場合、自覚症状が現れません。
がんが進行していくと、性行為のときや生理日ではないときに出血が起きたり、通常とは異なるおりもの(茶褐色・白色・黄色のおりもの、水っぽいおりもの)が出るようになったりします。
さらに進行するとがんが子宮外へ広がってしまい、多量の出血や下腹部・腰の痛み、足のむくみなどの症状が現れるケースもあるといわれています。
子宮頸がんの進行
まず、性行為により子宮頸部の表面にある細胞(上皮細胞)にHPVが持続感染を起こすと異常な細胞が増えます。
異常な細胞が2/3以上を占めると高度異形成、すべてが異常な細胞で埋め尽くされた状態を上皮内がんとよび、これらは治療しやすい段階です。
しかし、発見されずに進行すると子宮頸がんになります。
がん化した当初は子宮頸部内に留まっている、もしくは子宮周辺の組織に広がりがみられる程度ですが、さらに進行すると子宮外の骨盤・膣、膀胱・直腸などに広がったり、肺や肝臓などの離れた臓器に転移したりする可能性があります。
子宮頸がんの検査方法
がんの初期は大抵の場合、症状が現れないといわれています。そのため、子宮頸がんを早期に発見するためには検査が重要です。
ここでは、子宮頸がんの検査方法を紹介します。
細胞診検査
1つ目は、子宮頸がんの基本検査とされている細胞診検査です。ブラシのような専用器具で子宮頸部の細胞をこすり取り、顕微鏡で異常の有無を調べます。
細胞診検査は罹患率の減少効果が実証されており、子宮頸がん検診では必須項目にされています。
子宮頸がん検査キットの利用
子宮頸がん検査は、子宮頸がん検査キットを利用して自身でおこなうことも可能です。
子宮頸がん検査キットでは、同封されている器具を使用し子宮の入口周辺の細胞をこすり取る必要があります。
採取した細胞をポストへ投函すれば、メールや郵送を通じ2~3週間程度で検査結果が送られてきます。
子宮頸がんの検査の痛みとストレス
早期発見に大切な子宮頸がん検査ですが、検査時には痛みや不快感などのストレスを感じる方も一定数存在します。
子宮頸がん検診の痛みの原因
子宮頸がん検診でおこなわれるのは、内診や細胞診です。検査時に痛みが生じるのは、挿入する器具が金属製であるからではないかといわれています。
さらに、検査時の恥ずかしさや恐怖心などのストレスが痛みの出現に関係しているともいわれています。
子宮頸がん検診の種類
使用する器具や精神的なストレスから痛みを感じやすいとされる子宮頸がん検診ですが、そもそもどのような検査がおこなわれるのかよくわからない方もいるのではないでしょうか。
ここでは、子宮頸がん検診で実施される検査内容を紹介します。
子宮頸部細胞診
1つ目は、子宮頸部細胞診です。ブラシのような専用器具を用いて子宮頸部の細胞を採取し、顕微鏡で異常の有無をチェックする検査となります。
細胞の採取にかかる時間は1分程度、全体の所要時間は5分程度です。
子宮頸部細胞診は子宮頸がんや異形成の発見につながるケースも多く、子宮頸がんの罹患率・死亡率の上昇が科学的に実証されています。
そのため定期的に受診すれば、手術・子宮摘出などのリスク低減を期待できます。
経腟エコー検査(経腟超音波検査)
経腟エコー検査は超音波を発する棒状の器具を挿入し、映し出された画像を観察しながら子宮の位置・腫瘍や筋腫の有無、子宮内膜の状態など子宮全体の様子を調べるものです。
検査は、5~10分程度で終了するといわれています。
HPV検査
子宮頸部細胞診同様に、子宮頸部から採取した細胞にてHPVへの感染があるのかどうかを調べる検査です。
HPVには100種類以上の型があり、子宮頸がんと関係のあるハイリスク群はそのうちの13種類とされています。
HPV検査では、HPVのなかでもハイリスク型への感染の有無をチェックできます。
また、13種類のなかでもとくに発症リスクの高い16型と18型への感染の有無がわかる検査方法も広がり始めているようです。
このようなHPV検査を子宮頸部細胞診と併用すれば、がん細胞や前がん病変の見逃しをほぼ0%に近づけられるといわれています。
コルポスコピー検査(腟拡大鏡検査)
コルポスコピー検査は、子宮頸部・膣の表面を拡大できるコルポスコピーという顕微鏡を使用し、細かい部分まで観察するものです。
病変の疑いがある部位を数mm程度切除し、顕微鏡で詳しく調べます。
コルポスコピー検査は、主に子宮頸がん検診で異常があると診断された方に対しておこなわれます。検査にかかる時間は、10~15分程度です。
子宮頸がん検診の際ストレスを緩和する方法
痛みや不快感などのストレスを生じることも多いといわれている子宮頸がん検診ですが、いくつかのポイントを押さえればストレスは緩和できるといわれています。
ここでは、子宮頸がん検診の際に生じるストレスを緩和する方法を紹介します。
リラックスする
身体に力が入った状態では、挿入時の痛みや違和感が強く現れやすいといわれています。検診時には、深呼吸をして身体をリラックスさせましょう。
出産や性交渉の経験を正しく伝える
出産・性交経験がない、もしくは回数が少ない方も痛みや違和感が生じやすいといわれています。性交経験がない方は、検査時に出血するケースも少なくありません。
性交経験や出産経験の状況によっては、細胞診から経腟エコー検査や経腹エコー検査などに変更してもらえることもあるようです。
問診票の性交経験や出産経験の欄、医師による問診では必ず事実を伝えるようにしましょう。
定期的な受診
検査時の違和感や痛みなどは、回数を重ねるにつれ慣れてくるといわれています。
これは、どのようなタイミングで痛みや違和感が生じやすいかを把握しやすくなることが理由です。
子宮頸がん検診は、20歳以上の女性を対象に2年に1回の頻度で受診が奨められている検査です。
できる限り早く検査を経験し、検診は2年に1回のペースで繰り返し受診しましょう。
マイクロCTC検査は全身のがんリスクを検査
前項では子宮頸がん検診のストレス緩和方法を紹介しましたが、痛みへの不安や恥ずかしさが強く受診に踏み切れない方もいるでしょう。
実は、子宮頸がん検診に利用できる検査には「マイクロCTC検査」というものもあります。
マイクロCTC検査とは、血液がん以外のすべてのがんリスクを調べられる検査です。ここでは、マイクロCTC検査について詳しく解説します。
マイクロCTC検査は「間葉系がん細胞」を捉える
マイクロCTC検査では、がん細胞のなかでも浸潤・転移できる能力を持つ悪性度の高い間葉系がん細胞のみを捉えて個数が明確に提示されます。
そのため、全身のがんリスクの高さが明確にわかるのです。
1回5分の採血で全身のがんリスクが検査できる
マイクロCTC検査でおこなう項目は、採血のみです。1回5分で終了するため、仕事や家事・育児で忙しい方でも受けやすい検査といえます。
子宮頸がん検診を受けることに抵抗がある方は、まずマイクロCTC検査を受けてみましょう。
まとめ
海外の研究にて、ストレス関連の障がいやストレスのかかる生活を経験している方はそうでない方に比べて子宮頸がんでの死亡率が高いという結果が出ています。
また、慢性的なストレスは、子宮頸がんの発症リスクを高める要因になるともいわれています。
子宮頸がんを予防するために、日頃から適度なストレス発散を心がけることが大切です。
また、子宮頸がん検診時の痛みや不快感などは、身体をリラックスさせたり回数を重ねたりすれば緩和するといわれています。
検査時に生じる痛みが不安で受診できていない方は、ここで紹介したストレス緩和方法を試しながら検査を受けてみてください。
※本記事の情報は2023年10月時点のものです。
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〈参考文献〉
※1:海外がん医療情報リファレンス
※2:もっと知りたい子宮頸がん予防