大腸がんは死亡率の高いがんのひとつで、男性では第三位、女性では第一位とされています。※1
初期の段階では無症状であるケースも多いため、定期的に検診を受けることが大切です。
しかし、大腸がん検診にかかる料金がわからず、受診を躊躇している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、大腸がん検診にかかる費用を検査別に詳しく紹介します。
検査を受ける最適な頻度、大腸がんの原因や症状などもあわせて解説するため、ぜひ参考にしてください。
大腸がん検診の費用は対策型と任意型で異なる
大腸がん検診には対策型検診と任意型検診の2種類があり、どちらで受けるかにより費用は異なります。
検診の種類 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
対策型検診 | 該当するがんの死亡率減少を目的に、公共政策としておこなわれている検診 費用の一部は国が負担する 対象年齢や検査内容に縛りがある | 各自治体主催のがん検診 職域健診 |
任意型検診 | 対策型検診に該当しない検診 対象者・検査内容などに縛りがない 費用は全額自己負担 | 人間ドック
総合検診 |
対策型検診で受けられる検査は、基本的に便潜血検査のみです。国が費用の一部を負担するため、比較的安価で受けられます。
対して、任意型検診は全額自己負担です。
しかし年齢・検査内容などに縛りは一切ないため、受診したい医療機関で好みの検査項目を選んで受けられます。
対策型検査で陽性になると保険が適用される
対策型検診で便潜血検査を受けて精密検査が必要であると診断された場合、その後の検査にかかる費用には保険が適用されます。
医療機関を受診して医師から精密検査が必要と診断された場合にも、医療保険が適用されます。
便潜血検査で陰性であったとしても、血便があったり便秘がひどくなっていたりなど気になる症状がある場合には医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。
大腸がん検診にかかる費用を検査別に紹介!
ここで、大腸がん検診にかかる費用を検査別に紹介します。
便潜血検査
便潜血検査は、便中の血液の有無を調べる検査です。
大腸がんがあると大腸内で出血が起こることがあり、そのような出血の有無を確認するために実施されます。
検査時には2日分の便を採取し、指定の医療機関への提出が必要です。
対策型検診で受ける場合には自治体から補助が出るケースも多く、料金は無料~1,000円程度となります。
任意型の場合でも、1,000~2,000円程度で受けることが可能です。
全大腸内視鏡検査
全大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を入れ、肛門から盲腸までの大腸すべてを観察する検査です。
大腸がんを発見できる確率が最も高い検査とされており、検査時にポリープや病変を発見した場合にはその場での切除も可能です。
検査にかかる料金は大腸観察のみの場合、病変を見つけ生検までした場合、ポリープを切除した場合で大きく異なります。
保険適用の場合で5,000~20,000円程度、保険適用外では20,000~30,000円程度となります。
医療機関によっても料金は異なるため、検査前にはよく確認しましょう。
S状結腸内視鏡検査
大腸のなかでも、S状結腸に焦点を当てた簡単な検査です。
便中に血液が確認された場合に痔によるものなのか、直腸・S状結腸からの出血なのかを判断するために用いられます。
検査にかかる費用は保険適用の場合で3,000円程度、保険適用外の場合は10,000円程度です。
注腸検査(注腸造影検査)
肛門から大腸に造影剤を入れ、レントゲン撮影をする検査です。がん・ポリープ・潰瘍などの病変や形態異常の有無をチェックします。
検査にかかる料金は保険適用の場合で4,000~5,000円程度、そうでない場合は15,000~16,000円程度になります。
大腸CT検査(CTコロノグラフィ)
内視鏡を使わずに大腸がんやポリープを発見できる検査法です。大腸に炭酸ガスを注入して膨張させたあと、低線量のCT撮影を実施します。
撮影したCT画像をもとに、内視鏡検査・注腸検査に似た画像を作り出して診断が行われます。
精度は内視鏡検査に匹敵するうえ、身体への負担も少ない点が魅力です。
料金は保険適用で6,000~10,000円程度、そうでない場合で20,000~35,000円程度とされています。
腫瘍マーカー検査
がんが発生すると、血液中や尿中に特徴的な物質が出現します。このような物質が腫瘍マーカーです。
腫瘍マーカー単体でのがんの確定診断はできませんが、診断の補助や診断後の経過などを見るために用いられます。
大腸がんでは、腫瘍マーカーのCEAの数値が上昇するといわれています。
検査にかかる料金は保険適用で1,500~3,600円程度、保険適用外では5,500~12,000円程度となります。
ただし、腫瘍マーカーの種類や数により料金は変動します。料金はあくまでも参考程度におさえておきましょう。
大腸がん検診の指針
大腸がん検診は、国が定期的な受診を推奨している検診のひとつです。受診の推奨年齢や頻度が設定されています。
国は40歳以上に検査を推奨している
大腸がん検診の対象年齢は40歳以上で、検査項目は問診と便潜血検査の2つです。
40歳以上でない場合、対策型検診での受診はできません。
40代未満の場合には、人間ドックを利用し全額自己負担で受ける必要があります。
頻度は年1回
大腸がん検診は、年1回の受診が推奨されています。しかし、次のような方は年1回の検診を待たずに医療機関を受診した方がよいとされています。
- 便潜血陽性後に受診していない方
- 便に血が混じっている方
- 便が細いと感じる方
- 便秘と下痢を繰り返している方
- お腹の張りや違和感がある方
- 体重の急激な減少がみられる方
- 残便感がある方 など
上記に該当する点がある方は、できる限り早めに医療機関を受診しましょう。
精密検査を受けたあとの間隔は結果により異なる
精密検査を受けたあとの検査間隔は、精密検査の結果により異なります。
検査結果 | 次回の検査 |
---|---|
検査結果 | 次回の検査 |
異常なし | 年1回のがん検診 |
2個以上の小さなポリープがある | 3~5年に1回大腸内視鏡検査 |
3~9個の小さなポリープがある | 3年後に大腸内視鏡検査 |
20mm未満のポリープがある 10個以内のポリープがある 異形度の高い腺腫がある | 3年後に大腸内視鏡検査 |
20mm以上のポリープがある 10個以上のポリープがある 早期の大腸がんがある | 1年後に大腸内視鏡検査 |
大腸がんの早期発見・早期治療ができるよう、医師から伝えられた受診頻度は必ず守りましょう。
そもそも大腸がんとは?
ここまで大腸がん検診について詳しくみていきましたが、そもそも大腸がんがどのような病気なのかわからない方も多いでしょう。
そこで、ここからは大腸がんの概要や原因、症状などを解説します。
50代から増加する傾向にあるがん
大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんです。生涯のなかで男性の10人に1人、女性の12人に1人が大腸がんと診断されるといわれています。※3
罹患率は50代から急激に増加する傾向にあり、2019年度には50代男性は40代男性に比べて大腸がんを発症した方が約2倍であったというデータがあります。※4
食生活の変化が主な増加原因といわれている
大腸がんは、高たんぱく食・高脂肪食・低繊維食という食生活の欧米化が大きな原因とされています。
また、次に該当する方も大腸がんのリスクが高いといわれています。
- 高齢の方
- 1日に純アルコール量23g以上の飲酒をする方※5
- 喫煙習慣のある方
- 運動不足の方
- 肥満の方
大腸がんは、高齢になればなるほど発症リスクが高まるとされています。
また、飲酒をする方はしない方に比べて、大腸がんのリスクが高いです。
純アルコール量23gは、日本酒であれば1合、ワインであればグラス2杯が該当します。※5
飲酒をする方は、飲みすぎに注意が必要です。
たばこの煙には発がん性物質が含まれているため、喫煙習慣のある方も大腸がんのリスクが高いとされています。
運動不足や肥満の方も大腸がんになるリスクが高いといわれているため、運動・食事・睡眠など生活習慣を整え身体を健康に保てるようにしましょう。
主な症状は出血・下痢・便秘など
大腸がんは、初期の段階では無症状のケースが多いです。進行するにつれ、血便や便秘・下痢、残便感・腹痛などの症状がみられるようになります。
下行結腸やS状結腸、直腸にがんができた場合、便が通過しづらくなるため腹痛・嘔吐・血便などがおこりやすいです。
上行結腸・横行結腸・盲腸にがんが発生した場合には腹部症状は目立ちにくく、代わりに貧血や腹部のしこりが出現しやすいといわれています。
しかし、これらの症状は大腸がん以外の病気でも起こりやすいものです。
とくに血便は痔が原因だと思われがちで、なかなか医療機関への受診にはつながらないとされています。
大腸がんは早期に発見できれば、90%以上の確率で完治が見込まれる病気です。※6
検診を定期的に受け、早期発見につなげましょう。
がんの早期発見につながるマイクロCTC検査
マイクロCTC検査は、がんの早期発見につながる先進的な血液検査です。
血中のがん細胞そのものを捕捉するため、従来の画像検査では難しい1cm未満のがんを見つけ出すことが可能です。
ここからは、マイクロCTC検査の特徴をお伝えします。高精度のがんリスク検査を気軽に受けたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
身体的負担が少ないので安心
マイクロCTC検査は、身体的負担が少ない検査です。
少量の血液(4cc)を採取するのみで、検査前後の準備を含めても1回5分で終了します。
大腸CT検査や注腸検査のように、下剤を服用したり、食事を制限したりする必要はありません。検査後の副作用や医療被ばくの心配も不要です。
また、精神的な負担が少ないのもマイクロCTC検査の強みです。
一部の大腸がん検査は、肛門から大腸に炭酸ガスや造影剤などを注入するため、精神的苦痛を感じる方は少なくありません。
「検査を受けることに抵抗がある」「恥ずかしい、怖い」などの理由で受診を後回しにすると、がんの早期発見は難しくなります。
心身の負担が少ないがんのリスク検査を受けたい方には、マイクロCTC検査がおすすめです。
間葉系がん細胞を捕捉
マイクロCTC検査は、間葉系がん細胞そのものを直接捕捉する検査です。
がん細胞は、増殖の過程で新生血管をつくり、血中に漏れ出します。漏れ出したがん細胞の中でとくに注意が必要なものが、間葉系がん細胞です。
間葉系がん細胞は、周辺の臓器・組織へ広がり、血液やリンパを通じて全身に転移する能力が高い、悪性のがん細胞です。
マイクロCTC検査では、血中に溢れだした悪性の間葉系がん細胞をいち早く捉え、個数までをも明示します。
また、全身のがんリスクが把握できる点もマイクロCTC検査の特徴です。
大腸がん検診をはじめとする多くのがん検診では、特定の部位しか調べられません。
納得できる全身のがんリスク検査を受けたい方は、マイクロCTC検査をご検討ください。
大腸がん検診にまつわるよくある質問
最後に、大腸がん検診についてよくある質問へ回答します。
- 生理中に便潜血検査を受けても大丈夫?
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生理中の便潜血検査は、生理の血液が便に混入して陽性判定が出てしまう可能性があります。
正確な診断を受けるためにも、生理中の便潜血検査は避けましょう。
- 痔がある場合に便潜血検査は受けられる?
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痔の有無や程度関係なく、便潜血検査は受けられます。
痔による出血で陽性判定が出てしまうケースもありますが、大腸からの出血が原因である可能性も否めません。
便潜血検査は、大腸がんを発見する大きなきっかけとなる検査です。痔がある場合でも、定期的に検査を受けましょう。
- 自身に合った検査方法はどうやって探せばいい?
-
大腸がんの検査方法にはさまざまな種類がありますが、がん検診で厚生労働省が推奨しているのは便潜血検査です。
何の検査を受けるべきか迷った際には、まず便潜血検査を受けましょう。
便潜血検査で陽性判定が出た場合には、全大腸内視鏡検査を受けると安心です。
まとめ
大腸がん検診にかかる費用は、対策型検診か任意型検診かにより大きく異なります。
対策型検診では国が料金の一部を負担するため、比較的安価で受けられます。
しかし受けられる検査内容は基本的に便潜血検査のみあるうえ、対象者は40歳以上と限られています。
そのため、対策型検診に該当しない方は人間ドックや総合検診などの任意型検診にて受けなければなりません。
任意型検診の場合は受ける検査項目にもよりますが、10,000~30,000円程度が相場とされています。
ただし医師の診察のもと精密検査が必要と判断された場合には保険が適用されます。そのため、自己負担額は3割程度に抑えることが可能です。
大腸がんは早期に発見できれば、90%以上の確率で完治が見込まれる病気です。大腸がん検診の対象者は、年1回の受診を忘れずにおこないましょう。
大腸がん検診対象外の方も、気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診して早期発見につなげましょう。
※本記事の情報は2023年9月時点のものです。
〈参考文献〉
※1:がん情報サービス
※2:J-STAGE
※3:日本医師会
※4:がん情報サービス
※5:国立がん研究センター 中央病院
※6:公益財団法人 日本対がん協会