がんは、日本人の死亡原因の第1位の国民病です。国民の2~3人はがんで死亡しています。
しかし、「健康だからがん検診は必要ない」「がん検診を受ける意味がわからない」などの理由から、がん検診を受診していない方も多くいらっしゃいます。
初期のがんは自覚症状がないため、自身でがんの発症に気付くことは困難です。
がんは、早い段階で治療を行えば完治が望めますが、進行した場合、身体的・経済的な負担が大きい治療を受けざるを得ない状況になります。
がんの早期発見・早期治療には、国が推奨する科学的根拠に基づいたがん検診の受診が欠かせません。
本記事では、
- がん検診の現状
- がん検診のメリット・デメリット
- 受ける必要があるがん検診
- がん検診に関するよくある質問
を詳しく解説します。
がん検診における正しい知識を得て、がんの予防や早期発見につなげましょう。
がん検診の現状
はじめに、がん検診の受診率やがん検診を受診しない理由など、日本のがん検診の現状についてお伝えします。
また、比較対象として、アメリカ・フランス・イギリス・ドイツのがん検診受診率を紹介します。
がん検診の受診率
国立研究開発法人国立がん研究センターが発表した国民生活基礎調査によると、日本のがん検診の受診率は約40%と半数にも満たない結果でした。※1
検診の種類別の受診率は、下記のとおりです。
検診の種類 | 調査対象 | 全国の受診率 |
---|---|---|
胃がん | 40歳以上の男女 | 43.3% |
大腸がん | 40歳以上の男女 | 41.5% |
肺がん | 40歳以上の男女 | 45.0% |
乳がん | 40歳以上の女性 | 36.4% |
子宮頸がん | 20歳以上の女性 | 34.5% |
大腸がんと肺がんの検診は過去1年間、胃がん・乳がん・子宮頸がん検診においては過去2年間の受診有無の値です。
とくに、乳がん、子宮頸がんの検診受診率の低さが目立ちます。ここで、諸外国の受診率を見てみましょう。
アメリカ | フランス | イギリス | ドイツ | 日本 | |
---|---|---|---|---|---|
乳がん | 80.4% | 75.4% | 72.6% | 68.4% | 36.4% |
子宮頸がん | 85.0% | 71.7% | 68.5% | 78.7% | 37.7% |
欧米の受診率70~80%に対して、日本は40%未満と半分ほどの受診率です。※2
日本のがん検診受診率は極めて低いことがわかります。
がん検診を受診しない理由
国民生活基礎調査のデータより、国民の約60%はがん検診の未受診者であることが判明しました。※3
ここで、がん検診を受診しない理由について紹介します。
- 受ける時間がない
- 健康状態に自信があり、必要性を感じない
- 必要なときはいつでも医療機関を受診できる
- 費用がかかり、経済的負担になる
- うっかり受診するのを忘れた
- 検査に伴う苦痛に不安がある
一番多く寄せられた回答は、「受ける時間がないから」でした。
医療機関や混雑状況にもよりますが、受付から問診、検査、会計まで、1時間程度で終わるケースが多いです。
国が推奨する検査方法の所要時間は、いずれも10~20分程度です。※4
がん検診の受診に半日~1日かかると考えている方や、スケジュールの調整が難しい方が多く、がん検診の未受診につながっていると考えられます。
そのほか、必要性を感じていないと回答した方は、がんに関する正しい知識が定着してない可能性があります。
多くのがんは、初期の自覚症状がありません。そのため、がんの早期発見にはがん検診の受診が大変重要です。
経済的負担になるとお考えの方は、自治体の補助制度を把握していないのかもしれません。
自治体のがん検診は、無料または少ない自己負担額での受診が可能です。自治体のがん検診を活用しましょう。
【意味ない?】がん検診のデメリット
検査の精度が高いがん検診にも、下記のようなデメリットが存在します。
- 偽陽性の恐れがある
- 過剰診断の可能性がある
- 体に負担がかかる
ここからは、がん検診のデメリットの詳細をお伝えします。
偽陽性の恐れがある
偽陽性とは、「がんではないのに、がんと判定される」ことをいいます。
検診で、がんの疑いがあると判定されて精密検査を行ったが、結果的にがんではなかったということも少なくありません。
不必要な検査が行われることで、身体的・精神的な負担が生じる場合があります。
しかし、がんの早期発見は、精密検査ではじめて判明するものです。早期治療のためには、ある程度やむを得ないことだといえるでしょう。
過剰診断の可能性がある
がんには、進行がんのほかに生命を脅かさないがんが存在します。
生命を脅かさないがんは、自然に消滅したり、進行せずそのままの状態に留まったりするため、本来ならば治療をおこなう必要はありません。
しかし、現在の医療ではその判別が難しく、不必要な治療が行われる場合があります。
過剰診断の可能性を理解したうえで、検診を受診ください。
体に負担がかかる
一部のがん検診には、身体に負担がかかる場合があります。
たとえば、胃がん検診のX線検査を受ける際、病変を見つけやすくするために飲む造影剤のバリウムです。
検査後は下剤を服用し、バリウムの排出を促しますが、うまく排出されずに便秘になるケースや、便が固まり腸閉塞を起こす可能性があります。
また、X線検査は放射線を照射しレントゲン画像を撮影するため、医療被ばくは避けられません。
がん検診を受けるメリット
がん検診は、がんの早期発見に注力した死亡率減少効果が証明されている検診です。
がんの早期発見は、身体の負担はもちろん、経済的な負担の軽減にもつながります。
ここからは、がん検診を受けるメリットについて紹介します。
自力でがんの早期発見が難しい
多くのがんは、初期の自覚症状はありません。
身体の異変を感じる頃には進行してしまっているケースがあり、健康だからがんではないとは言い切れません。
また、自治体や職場などでの健康診断は、おもに特定の疾患のリスクを調べる検査のため、がんの発見にはつながりません。
がん検診は、科学的根拠に基づいた検査方法を用いており、がんの早期発見と死亡率減少効果が認められています。
早期発見ががんの完治につながる
がんは、早期に発見し、適切な治療を行えば完治が望める疾患です。
また、初期のがんであれば、仕事や家庭、プライベートなどのライフスタイルに影響を及ぼさない、身体的な負担を軽減した治療の選択が可能です。
がんが進行した場合、治療のために退職したり、家族や友人との時間が減ったりと、日常生活においてさまざまな制限をしなくてはなりません。
早期発見すれば治療費を抑えられる
がんの早期発見は、経済的負担の軽減にもつながります。
初期のがん治療においては、内視鏡治療や通院による治療が受けられたり、短期間の入院で済むケースも多くあります。
治療費・検査費・入院費を抑えられるほか、早い社会復帰も期待できるでしょう。
受ける必要があるがん検診
厚生労働省は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を定め、科学的根拠に基づくがん検診を推進しています。
推進するがん検診は、次の5種類です。
- 胃がん検診
- 子宮頸がん検診
- 肺がん検診
- 乳がん検診
- 大腸がん検診
検診の種類により、検査項目、対象者、受診間隔が異なります。
多くの市区町村でがん検診の費用を公費で負担しており、少ない自己負担額での受診が可能です。
ここからは、国が推奨する5つのがん検診の詳細をお伝えします。
胃がん検診
胃がん検診は、50歳以上の男女を対象に、2年に一度の受診を推奨しています。
検査内容においては、胃部X線検査、胃内視鏡検査から選ぶことが可能です。ともに、検査当日は朝食が食べられませんのでご注意ください。
バリウム(造影剤)と発泡剤を服用し、胃の状態を観察する検査です。食道から、胃や十二指腸の形、大きさ、粘膜まで詳しく確認します。
口または鼻から内視鏡を挿入し、胃の内部を観察する検査です。一部の医療機関では、鎮静剤や麻酔を使用し、嘔吐反射や苦痛を和らげます。
検査時に疑わしい部位が見つかった場合は、組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
子宮頸がん検診
子宮頸がん検診の対象者は、20歳以上の女性です。2年に一度の検診間隔が推奨されています。
子宮の入口部分である頸部の細胞を、ヘラやブラシなどの専用器具で採取し、顕微鏡で調べます。
がん細胞や、がんに進行する可能性のある前がん病変の有無が確認できます。
月経中は、精度が落ちる可能性があるため、月経期間は避けて受診してください。
肺がん検診
肺がん検診は、40歳以上の男女を対象に、年1回の受診を推奨しています。
検査内容は、胸部X線検査が基本です。ただし、50歳以上の喫煙者には喀痰細胞診が追加されます。
胸部にX線を照射し、肺、心臓、縦隔(左右の肺の間にある領域)などの異常を調べます。
肺がんのほか、肺結核や肺炎などの炎症も発見が可能です。
痰に含まれる細胞を調べる検査です。現在喫煙されている方はもちろん、過去に喫煙歴のある方も対象となります。
乳がん検診
乳がん検診は、40歳以上の女性が対象です。2年に一度定期的に受診しましょう。
マンモグラフィとは、乳房専用のX線検査です。触診での確認が困難な小さなしこりや、石灰化を見つけるのに有効です。
乳腺を見やすくするために、乳房をプラスチック板で圧迫して撮影します。乳房に挿入物がある方は受診できない場合があります。
大腸がん検診
大腸がん検診は、40歳以上の男女が対象です。毎年の受診を推奨しています。
がんやポリープなどの疾患がある場合、大腸内に出血が見られる場合が多く、便潜血検査を用いて出血の有無を調べます。
便に混じった血液を検出する検査です。2日分の便を採取するため、事前に採便容器を受け取る必要があります。多くの場合、医療機関からご自宅へ郵送されます。
全身のがんリスクを早期発見できるマイクロCTC検査
マイクロCTC検査は、全身のがんリスクを早期発見できる検査です。
国が推奨する5つのがん検診(胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がん)のリスク検査がまとめて受けられると考えてよいでしょう。
ここからは、マイクロCTC検査の概要・特徴について詳しく解説します。
検査は採血のみ
マイクロCTC検査は、採血のみで全身のがんリスクがわかります。血中に溢れだしたがん細胞そのものを捉え、個数を明示する先進的な検査です。
採取する血液は4ccと少量で、内視鏡検査のような苦痛や、X線検査における被ばくリスクなどはありません。身体的負担が少ない検査といえます。
また、服を脱いだり、身体に触れたりする必要がないため、精神的な苦痛も少ないでしょう。
婦人科系のがん検診において、「恥ずかしい」「触られるのに抵抗がある」という方にもマイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査の所要時間は、検査前後の準備を含めても1回5分程度です。
仕事や家事の合間にも検査が受けられるため、がん検診を受診する時間がない方は、マイクロCTC検査をご検討ください。
マイクロCTC検査は、採血のみで全身のがんリスクがわかります。血中に溢れだしたがん細胞そのものを捉え、個数を明示する先進的な検査です。
採取する血液は4ccと少量で、内視鏡検査のような苦痛や、X線検査における被ばくリスクなどはありません。身体的負担が少ない検査といえます。
また、服を脱いだり、身体に触れたりする必要がないため、精神的な苦痛も少ないでしょう。
婦人科系のがん検診において、「恥ずかしい」「触られるのに抵抗がある」という方にもマイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査の所要時間は、検査前後の準備を含めても1回5分程度です。
仕事や家事の合間にも検査が受けられるため、がん検診を受診する時間がない方は、マイクロCTC検査をご検討ください。
悪性度の高いがん細胞のみ捕捉
マイクロCTC検査では、悪性度の高いがん細胞のみを捕捉します。
悪性度の高いがん細胞とは、ほかの臓器や組織に浸潤・転移する能力が高い「間葉系がん細胞」を指します。
「間葉系がん細胞」は、浸潤・転移する能力が活発です。また、加速度的に増殖をし、半年~1年で進行がんになる可能性があります。
マイクロCTC検査は、血中に漏れ出した「間葉系がん細胞」の検出に特化した検査です。
CT検査やMRI検査などの画像検査に比べて、非常に早い段階で「間葉系がん細胞」の発見が可能です。
再発リスク防止にもつながる
マイクロCTC検査は、がんの再発リスク防止にもつながります。
一般的に、がん治療(手術や抗がん剤)が終了した後5年間は、半年ごとにCT検査やPET検査を受けて、がんが再発していないかのチェックが必要です。
しかし、CT検査やPET検査は、放射線による医療被ばくのリスクが指摘されています。
がんの再発を確認するための検査が、発がんリスクを上昇させてしまう恐れがあります。
マイクロCTC検査の場合、医療被ばくの心配をせずに、がんの再発リスクを見つけることが可能です。
また、CT検査やPET検査などの画像診断では発見が難しい、1cm未満の早期がんを発見できる点も、マイクロCTC検査の特徴です。
がん検診に関するよくある質問
最後に、がん検診に関するよくある質問を紹介します。
- がんの早期発見できる期間は?
- がんが進行するスピードは?
- がんが自然治癒する確率は?
がんにおける正しい知識を得ることは、がんの予防や早期発見にもつながります。ひとつずつ確認していきましょう。
がんの早期発見できる期間は?
がんを早期発見できる期間は、1~2年といわれています。
たとえば、乳がんの場合、早期がんは2cmまでのサイズをさします。
1cm以下の小さながんを見つけることは困難です。発見可能なサイズの1cmから、早期がんの2cmまで、わずかたった1~2年しかありません。※5
自覚症状が乏しい初期のがんの早期発見には、定期的ながん検診の受診が重要です。
がんが進行するスピードは?
がん細胞は、1cmになるまでは10~15年ほどの長い時間がかかります。
しかし、1cmから2cmの大きさに成長するのは、わずか1~2年とされています。※6
がんは、大きくなるにつれて成長速度が加速し、気付いたときには重症化しているケースも少なくありません。
そのため、がん検診は定められた間隔での受診が重要です。
がんが自然治癒する確率は?
がんが自然治癒する確率は、6~10万人に1人くらいといわれていますが、その原因・理由については不明です。※7
がんの自然治癒は、偶然生まれた現象であり、「治療をしなくても、がんは治る」と考えてしまうのは大変危険です。
がんの治療には、手術、放射線療法、薬物治療など、科学的な根拠が証明されている治療法を選びましょう。
まとめ
「仕事が忙しい」「家事・育児で時間が取れない」などの理由から、がん検診を受けたことのない方も多くいらっしゃいます。
また、健康に問題がないからがん検診は必要ないと考えている方もいるでしょう。
しかし、初期のがんは自覚症状がないため、異変を感じる頃には進行してしまっていることが少なくありません。
がんが進行すると日常生活にさまざまな制限が生じ、仕事やプライベートを諦めざる得ない状況になる恐れがあります。
自治体のがん検診では、科学的根拠に基づいた検査を実施しており、無料もしくは少ない自己負担額で受診が可能です。
定期的にがん検診を受診し、初期のがんの早期発見・早期治療につなげましょう。
※本記事は、2023年9月時点の情報です。
〈参考サイト〉
※1、※3:がん情報サービス「がん登録・統計」
※2:国立がん研究センター「がん検診受診率の国際比較」
※4:国立がん研究センター「がん検診について」
※5、※6:がん対策推進企業アクション「早期がんを発見できる時間」
※7:岩永, 剛「がんの自然治癒」